(1) 技術的な特徴

A. リアルタイムジオコーディング

GNSS-IMUから出力される位置姿勢データ、レーザセンサーによる距離データを時刻同期させて座標を計算します。多くの会社ではセンサーメーカーが提供するソフトを使用して後処理しますが、我々のシステムは自社でコードを開発していますのでより効率的に処理が行えます。


B. データ処理、収録能力

(計測継続時間)

市販のレーザ計測システムには、計測時間に制限があるものや、データをハードディスクに保存する待ち時間が必要なものが多いです。そのようなシステムでは、時間を気にしながら作業し、データ書き出しのため度々作業を止める必要があります。

作成したシステムでは、演算された点群データはバックグラウンドで一定時間ごとにハードディスクに保存されます。そのため、何時間でも計測し続けることが可能です。

 

(ループ計測不要)

SLAM式ではないのでドリフト誤差軽減のloop closerは必要ありません。好きな場所でスタートし、好きな場所で終了することができます。また、複数の計測データの調整も必要ありません。必要な場所を走行するだけでデータ追加や変化抽出が可能です。(ただし、GNSS受信状況が悪い場所は精度向上のため別途処理が必要です)

(データ処理時間)

通常、レーザデバイス、GNSS、 IMUのデータはシステム専用のフォーマットに個別に保存されます。私たちのシステムはデバイスからTCP/IPやUSBケーブルから送られてくる情報を直接利用し、即座にジオコーディングやジオイド補正が可能です。そのため、レーザデバイスから送られてくる大量のパケットデータとRTK-GNSS/IMUデータを遅延なく合成し、計測直後(計測中でも)に点群を利用できるようにしています。


C. 測地座標でのデータ整備

一般的に測量や土木で使用される成果は測量座標(平面直角座標〇系m、標高m)であり、GNSSで得られる測位成果(緯度、経度、楕円体高)から変換が必要です。本システムではリアルタイムに平面直角座標への変換、ジオイドモデル(国土地理院発行)による標高換算を行うので、成果をすぐに利用できます。下は計測データと街区基準点との比較結果。


D. RTK-GNSS のFloat解からFix解への移行時のズレ修正

 市街地や森林地域ではRTK-GNSSでFIX解が得られずFloat解になることが多いです。簡易MMSではIMUを併用するのですぐに精度が悪くなることはありませんが、Float解の時間が長いと徐々に位置がずれていきます。衛星状況が良くなるとFIX解になり一気に精度が良くなります。

 

 Float解の区間を精度が悪いので使わない、というのは残念です。何とかして精度を向上させて使いたいと思います。

 

①Float-Fixギャップ修正法:

 FiX解に戻る際に蓄積誤差を持ったデータは一気に真値に変化します。その前後の位置変化を知ることで、Float解がどの程度ずれているかを把握できます。プログラムでは、品質が低下した時点(誤差発生時)までを誤差を案分して修正します。

 

②ループ・クローズ処理

 SLAMで利用される方法で、同じ地点を通過したデータ同士を比較して誤差を解消する方法です。始点‐終点一致する必要はありませんが、データ同士が重なっている必要があります。

 


E.道路視認用の可視化方法

道路情報抽出に必要な、道路標示(白線)、路肩位置、道路標識を見やすくし、三次元図化を楽にする工夫を考案します。

 

<一般的な方法>

 道路標示:通常は写真の色を利用するが、車両の少ない夜間の計測も多いので反射強度が有効です。ただし、標高変化も見たい場合が

      多いので、いちいち着色を切り替える必要がありました。

 路肩位置:標高段彩や陰影処理、エッジ抽出などを工夫していますが、山地や高架などの高低差がある道路はカラーテーブルの変更に

      手間がかかります。

 障害物:樹木やトンネル天井、周辺の建物が作業者の見通しを妨げる。できることなら自動で消えてほしい。

 道路標識:路面の作業時の障害物はOFFにでき、構造物の図化作業時だけONにしたい。

 

 <提案方法>

 ①段彩(MMSの軌跡に対する比高)+反射強度(ある閾値以上)

 ②クラス分け:比高による区分(例えば、1m以上をON/OFFできるようにした)

 を点群データに適応します。車載レーザの点群と軌跡データがあれば自動処理で実施が可能です。

 点群閲覧時は、点群のRGB表示にし、比高1m以上のクラスを非表示/表示にして使います。

 

<自動処理>

 

MMS N-Quickはこの加工を標準とし、着色、クラス分けされたlas点群が自動で作成されます。


F.差分抽出

本システムでは計測するだけで地理座標の点群データが作成されます。

航空測量の場合は標高データの差分作成(ヒートマップ)を作成しますが、道路管理の場合は鉛直構造物の変化も見たいのでデプスマップの差分が有利です。点群ビューワ”Mierre”は任意視点からのデプスマップを作成できます。今回は、2時期の計測データから同一視点の疑似デプス画像を作成し、その比較の可視化(差分)を行っています。 

事例)2019年9月と10月に計測した道路沿いのデータです。どこが変わったか、わかりますか?

[差分画像]

計測データから作成したデプスマップの引き算結果です。新しく増えた場所は赤色、減った場所は青色になります。

バス停に注目すると、手前のバス停が無くなり、奥に移動したことが分かります。

 

このように簡易MMSにより複数回計測すれば二時期の変化を簡単に可視化することができます。

少し長いですが、Yutubeもご覧ください。


(2)検証

位置精度の検証として、車線分離用のコーンポストや歩道のガードパイプを実測しました。

 

いろいろと点検していますが、GNSS受信状況が良い場所(FIX解)はレベル500を満足しているといえます。 

今後、GNSS受信状況の悪い場所(Float解や非GNSSエリア)を今後検証したいと思います。


(3)計測事例

計測事例:住宅地

 

高台にある住宅街の走行テストをしました。軽自動車で狭い路地でも楽に走行でき、とてもスムーズに三次元データが取得できました。


計測事例:山地道路

 

植生の多い道路を中心に走行テスト RTK-GNSSのFIX解が出にくいため、IMUの粘りが重要です

市街地のデータは形だけでなく、反射強度によって道路標示が良く確認できます。


概要

開発までの道のり

テスト走行記録

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